業界初の経費削減

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カターが任命を発表した数日後に私はたまたま話したのだが、彼は、大統領との朝八時の会談にワシントンに出てくるように言われたこと、大統領には、その仕事に就くことを引き受けてもらうには何が必要か聞かれたという。
自分で作ってきた約二〇項目の要望を示すと、カーターはそれを、法律家が使う黄色い罫線の入った紙に書きとめたそうだ。 最後の要望は、自分のことをあら捜ししたり、ホワイトハウスの大統領の周りにいる「小僧」どもがFRBの政策に口を出すようなことは絶対なしにする、というものだった。

自宅に戻った彼は妻に、就職をしくじったよと報告したそうだが、次の日の朝、大統領は電話をかけてきて彼の名前を議会に提出したと伝えたのである。 ボルカーの特に偉かったところは、変化の激しい世の中では自分が実は理解できず、勉強しなければならない事柄がある、ということを認識していた点にある。
通貨哲学上の問題については、同じ理事のへンリー・ワリックを尊重した。 ワリックはオーストリア移民で、イエール大卒のエコノミスト、保守派だが明けっ広げで度量も大きく、素晴らしい本の著者でもある。
また、ボルカーは、銀行経営や実務上の問題ではFRB副議長のJ・ミッチェルに一歩譲った。 ミッチェルはうなるような声と白髪の坊主刈りが特徴の厳格な男で、以前はイリノイ大学の教授(金融)だったので銀行家の行動の理由や動機をよく知っており、また理事としての任期一四年が終わった後もFRBに顧問としてとどまっていた人物である。
ところが銀行や銀行業の定義ということになると、今度はニューヨーク連銀時代の部下で、肉付きのいい、赤ら顔のアイルランド系米国人、フォードハム大卒のエコノミスト、E・ジェラルド・コリガンをボルカーは頼りにした。 マス釣り仲間でもあった。
ボルカーはコリガンがミネアポリス連銀の総裁に任命されるように計らい、コリガンはその止まり木の上から、年次報告書、つまり「銀行は特別だ」という理由に関するパンフレットを執筆したのである。 銀行には、ただの金融サービス機関にはない機能がある。
資本主義経済の善し悪しは、銀行がそうした機能をうまく果たしているかどうかに大きく左右される、というのだ。 その二つの機能はお尻の部分でつながっているのだが、@マネーサプライの創出と、A預金者が銀行に預けたお金を借り手の顧客に貸し出すことである。
事実、一九七〇年の銀行持ち株会社法の修正では、法律上、銀行を小切手口座を提供し、企業や商店向けに融資を行う機関と定義している。 我々の記憶では、これら二つの機能は、フロアの真ん中、あるいは後方に少し高くなった壇の上にあるデスクに融資担当者がいて、預金したり小切手を現金化するATMなどないので、客は仕方なく、そこに行くという具体的な光景によって示される。

支払いと融資の、この関係から逃れることはできない。 すでに述べたように、融資が一件行われるごとに、我が国全体のマネーサプライは増大する。
一つだった預金が二つに増えるからである。 銀行融資を作り出す基本的なプロセスについては、二つの異なる見方が可能だ。
シカゴの銀行家でジャクソンピルのパーネット・バンクスに移り、壁に懐かしい雪の日の写真を飾っているトマス・ヤコプソンは、「我々は融資を売り物にしているわけではない。 流動資金の利用法を探しているだけだ」と言った。
エコノミストのH・ミンスキーは、資金の提供は銀行業の二次的役割だと主張する。 「銀行業の本質的活動は引き受け、つまりある当事者が信用に値すると保証することにある。
銀行は、債務証書の引き受けによって、債務者が支払おうとしない、あるいは支払えない場合はその記載金額を支払うことに同意するのだ。 こうして引き受けられ、あるいは裏書きされた手形は、公開市場で売ることができる。
銀行融資とは、引き受けた手形を銀行が買うことと同じなのだ」ニューディール期のエコノミストのローチリン・カリーは、マネーサプライの創出(それは広義には支払いシステムの管理も意味する)こそが、ほかの経済主体と銀行を区別し、さらに銀行を一層重要な存在にした、と述べている。 お金を貸すことは銀行でなくてもできるが、通貨を創ることは銀行にしかできない。
カリーは、さらにこう書いている。 「銀行が経済的に特に重要なのはお金を貸すからではなく貸し手ならほかにもたくさんいるーー、現代国家では地域社会の支払い手段のほとんどすべてを銀行が供給するからである。
要求払い預金との関連は別にして、銀行融資や投資をほかの融資と完全に区別する論理的理由は何もない」この五〇年後に、コリガンが同じ主張を繰り返した。 「銀行をほかのさまざまな金融機関と区別する唯一の特徴は、銀行が取引決済口座を発行している点にある。
つまり、額面通りの支払いが合法的に、かつ規則上でも、あるいは実際にも行えて、しかも第三者に簡単に移すことのできる口座のことだ」。 また一般人の観点からすると、銀行が特別なのはその支払いシステムであることは疑う余地がない。

「今時、自分の住宅ローンや自動車ローンのお金がどこから来ているかなんて誰も気にしない」と、USオーダーのJ・バッカスは、電子支払機の機械室で言う。 「銀行を必要とする唯一の理由は小切手口座さ」だが銀行とほかの金融機関では、重要な社会的また業務上の違いがある。
銀行では、借り手も貸し手も一体で、全く同じことが多い。 借り手は銀行に小切手口座を維持するが、それは当たり前のことだが自分がどのように使ったかについてのプライバシーに関する権利を放棄するという意味を持つ。
貸し手である銀行にはその情報が必要だからである(州法銀行監督官会議のJ・ワット議長は、「優秀な融資担当なら、毎月、借り手の小切手をばらばらとめくるのに少々時間をかけるもの」と言っている)。 銀行家は借り手と緊密な関係を保っていればこそ、借り手にとって貸し手にとって、また大きくは地域全体にとって、融資を生産的なものにするチャンスを広げることができる。
こう見ると、銀行の中心的機能は他者でも管理できるマネーサプライや支払いシステムではなく、設立資金の調達という最初のハードルを越えて、成功するための融資を今、必要としているベンチャー企業に見込みがあるかどうか、最初に判断する役割にある。 銀行は金業のプランを審査し、その執行を監視するのだ。
マーケット・アナリストも、大部分の学者エコノミストも気付いていないのだが、地域、産業別に専門化した融資担当の存在こそ、銀行以外の企業の投資戦略として多角化が成功する理由なのである。 分野を越えたさまざまなベンチャービジネスへの投資は、大多数が失敗するのだから、(当然)損失を生むだろう。
だが最初に創業資本、次に銀行からの融資、そして株式公開というパターンは、たとえインターネット会社でもほとんど変わることはない。 融資担当が最初に融資額を減らしたが最後、投資家は、間違うわけにはいかない誰かが、この会社のビジネスで資金は回転するかどうかを何度も何度も審査したのだな、とピンと来てしまうのだ。

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